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2022.1.12

【Camp Interview】Vol.3 創業80年、穀物カンパニーとして 「デザイン」を活用し新たな価値を創造する。

穀物を売る企業から、

穀物を好まれる生活者の「ライフスタイルに寄り添う」企業へ。

成長への新しい視点を全社員で共有したい。

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DXDキャンプ 応援企業インタビュー
株式会社はくばく 代表取締役社長
長澤 重俊
  ×
  インタビュアー
  DXDキャンプ デザインHR/コミュニケーター
  湯浅 保有美

<株式会社はくばく>

健康効果の高い大麦を多くの人に喜んで食べて欲しいー。1953年、のちに社名ともなる大麦の粒を半分に切り黒い筋を取り除いた「白麦米(はくばくまい)」を発売し、以来、大麦や雑穀、小麦などさまざまな穀物の持つおいしさを追求している。日本国内の食用大麦(精麦)販売シェアは約6割。食生活の変化や生活者ニーズを捉え、「ないものはつくる」の精神で画期的な商品開発を続ける。製品開発はもちろん、穀物の可能性を探る「基礎研究」にも力を入れている。

所在地:本社 山梨県中央市西花輪4629
資本金:9,800万円
設立:1941年(昭和16年)
代表者:代表取締役社長 長澤重俊
事業内容:食品製造および販売
従業員数:390名
HP: https://www.hakubaku.co.jp/

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「お客さまに寄り添う」とはどういうことかを知識ではなく体験で学んで欲しい。
ーー「DXDキャンプ」湯浅保有美 氏(以下、湯浅):いよいよ今日から「DXDキャンプ」のフィールドワークが始まりました。(※インタビューは「フィールドワーク」当日に実施)
これは、「DXDキャンプ」で「高度デザイン人材スキル」を学んだメンバーと、応援企業であるはくばくさんの社員が、ワークショップを通して共に企業課題に取り組むというプロジェクトです。こういった実践型の取り組みを行っているのは、日本では私たち「DXDキャンプ」だけだと思っているのですが、長澤社長は今回の「フィールドワーク」にどんなことを期待されていますか?

株式会社はくばく 代表取締役社長 長澤重俊 氏(以下、長澤):最初に申し上げると、当社は最近「穀物素材メーカーからの脱却」ということを経営目標を掲げました。

はくばくは、80年前の創業当時から「美味しく健康によい穀物をお客さまに届けたい」という一心で、技術や製法を常に“磨き上げ“てきましたが、ここから先、いままでと同じ考え方では成長は見込めません。

少し極端な言い方をすると、これまでは、技術や製法を磨き上げ、良いモノをお客さまに提供したら、その先どのように食べていただくかはお客さまの“自由意志”である、というスタンスでやってきたともいえます。

だからこそ「穀物のプロ」として、穀物に関する研究や調査などは、民間企業ではなかなか難しい基礎研究も含めて積極的に取り組んできました。しかし、ここからは、穀物という「モノ」ではなく、「お客さま視点」で提供価値を考えていかなければならない。
それを、私たちは(これまで続けてきた)磨き上げの先にある「穀物素材メーカーからの脱却」として、目標にした訳です。

とはいえどこから始めたらいいのか。私たちは長年BtoB企業、つまり直接お客さまに商品を届けてきたのではなく、あくまで小売店に届けるまで。現状では「その先のお客さま(生活者)のことを知らなすぎる」という課題にぶつかっています。

その課題への対策としては、著名な先生やコンサルタントの方に入っていただくという方法もあると思うのですが、これでは企業の新たな文化として根付かせていくことは難しい。知識や情報としてというだけでなく、実践として「お客さま視点で考えるとはどういうことなのか」「寄り添うとはどういうことなのか」を社員自らが体感で身につけていって欲しいと考えています。

ーー湯浅:お客さま、つまり「人」に寄り添い、困りごとや「こうしたい!」という想いをくみ取り解決していく。まさに「デザイン」の考え方そのものです。
「デザイン」というと、少し前まではいわゆる意匠性を指す言葉でしたが、最近ではその意味が大きく拡がりました。広義の「デザイン」などと呼ばれたりもしていますが、私たちDXDキャンプでは、「デザイン」を「人や企業、社会が抱える課題に気づき、解決する方法をカタチにしていく」ことと位置づけています。

長澤:そうなんですね。広義の「デザイン」に関する取り組みは、今回が初めてですが、「こういう発想、視点を持つこと」こそが、お客さま視点ということであり、私たちがめざす「脱却」なんだということを、DXDキャンプメンバーの皆さんと共に生活者視点で新商品アイデアを創出していく「フィールドワーク」に直接参加できた社員のみならず、すべての社員に対して、“具体的なケーススタディとして示してあげたい“と考えていますし、まさにそこを期待しています。

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「深化」と「探索」の両輪の視点を社員全員で共有したい。
ーー湯浅:「脱却」という言葉に、社長の強い意志を感じます!ただ、これまで80年間「磨き上げ」を続けてきて、ここで急に「脱却」というのは、社員のなかには驚かれる方もいらっしゃるのでは?

長澤:そうですね。実は、この7月にレトルト加工をできる工場を新たに取得しました。これまで当社で作れなかった「すぐに食べられる食品」が作れることになったことにより、このチャンスを活かそうととさまざまな新商品を開発中です。そのようなタイミングも重なり、この「脱却」という言葉もより一層の磨き上げ、当社でいう「加工度の向上」をめざすのだ、という意味で捉えている社員が多いと感じています。

しかし、先ほどお話ししたように、私が本当に伝えたい「脱却」とはこれまでの延長にあるものではありません。

少し前に、『両利きの経営※』という本が世界的ベストセラーになりました。世界のイノベーション研究のうちの一理論である「両利きの経営」に関して実践的にまとめられた本ですが、これから企業が成長していくためには、「知の深化」と「知の探索」が両方バランスよく実行されていくことが必要だと書かれています。

「知の深化」とは、自社の持つ一定分野の知を継続して深掘りし磨き込んでいくこと、一方の「知の探索」とは「自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を拡げていくことを指しています。

当社でいえば、「深化」とは加工度を上げていく、つまりこれまで穀物素材メーカーとして脈々と行ってきたことです。そして、当社では、この「深化」はもちろんのこと、新たに「探索」の文化を創りあげていかなくてはならない。本でいうところの「自社の既存の認知の範囲を超えて拡げていく」、これができる企業へと成長することが、私の伝えたい「脱却」のイメージなのです。

ーー湯浅:既存を超えて新たに拡げていく、そのために必要なのが「生活者に寄り添い課題を抽出する力」つまり広義の「デザイン」ということになりますね。

長澤:そうですね。しかし、概念として理解はできるのですが、これを実際に自分ゴト、自社ゴトとして捉えるのはまだまだ難しいのが正直なところです。

先日、開発部長とこんな話をしました。ある生活者の声をきっかけに、唐揚げに「大麦の粉」を使うと美味しく揚がるということがわかってきたというのです。この、生活者の「美味しい唐揚げを食べたい」というニーズにまず気づいたことで、我々はそこから、じゃあ最も唐揚げに適した粉の粒度は?種類は?という「加工度の向上」ができると彼は説明してくれました。

これは、生活者に寄り添い「探索」を行っていくことは、我々の得意とする加工度の向上とつながっており、両輪でまわすことが成長につながるということを分かりやすく、私たち自身の言葉に翻訳してくれています。

ーー湯浅:なるほど。とても分かりやすい例ですね。どんな人が、いつ、どこで、どう食べているのか、生活者の行動やニーズからみえてきた新しい可能性が、それに応えるための次の技術や製造方法を生む。どちらが大事ではなく、どちらもつながっているということがよくわかります。

長澤:企業のなかに新しい文化を創るとき、確かに今の既存の組織とは別の部隊を作って動かしていくという方法もあると思います。さきほどの『両利きの経営』という本のなかでも、スピード感を持って変革していくためには、例えばこれまでの組織とは別に、「探索」に特化した部門をつくり専任させることが有効だと書かれていましたが、私ははくばくという会社には、それは合わないと考えています。

開発部門も、生産部門も、購買部門も、すべての社員が「探索」と「深化」という両方の視点を持ち、同じ発想になって共に成長していきたい。いま、社員はおよそ400人います。文化を変えていくには、時間がかかるのも事実。新たな「探索」につながるであろう、今回のDXDキャンプとの共創体験に参加するのは、そのうちの6人ですが、まずはここから一人ひとりの心に灯がついてくれることを期待しています。

※出典 『両利きの経営』2019 東洋経済新報社
チャールズ・A.オライリー/マイケル・L.タッシュマン 著
入山章栄/渡部典子 翻訳

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お客さまを知る“場”も
積極的につくっていきたい。

ーー湯浅:「デザイン思考」とは特別なスキルと思われがちですが、私たちは技術というよりは「体質」に近いと考えています。今回のような体験も有意義ですが、常に「生活者」を意識し、バイアスのない観察を実践的に続けるということも重要なことです。

長澤:そういう意味では、これまで「穀物素材メーカー」として営んできた分、生活者との直接の接点が非常に少ないのも事実。社員に「お客さま視点で」といくら号令をかけたところで、お客さまを知る機会がなければ、いいアウトプットが生まれるはずはありません。

アンケートなどの方法ありますが、やはりその場だけのものになってしまい、お客さまも社員も、自分ゴト化して考えるのは難しいですよね。良くないモノは良くない、といったことを本気で言ってもらえる、あるいは一見穀物とは関係なさそうにみえるけれど、食生活でこんなことに困っているというようなことまでを、社員が直接感じ取れるようなコミュニティといいますか、お客さまとの新たな接点をぜひつくりたいと思っています。

生活者を知る新しい場づくりも、今後「DXDキャンプ」の皆さんと共創していけるといいですね。

デザイン思考は、社員の幸せにつながる。

画像5を拡大表示ーー湯浅:ここまで長澤社長の未来への想いをお聞きしてきて、社員の皆さんに想いや考えを伝えるということを大切にされていることが伝わってきました。
「デザイン」は「人への視点」であり、その「想いをカタチにしていく」こと。お客さまに対して、というだけでなく、社長のおっしゃるような社内の「横串」つまり一人から全体への波及や組織同士の連携効果、そして社長の想いを社員一人一人に“深く”伝える「縦串」の効果、その両方を期待できます。

長澤:会社の成長を計る指標は様々あります。利益や株価第一という考え方も確かにありますが、我々は、お客さまに貢献すること、そしてお客さまを喜ばせ、社会への貢献が目に見えてカタチになることで、社員のやりがいや幸せにつながることをめざしていきたい。

今後、広義の「デザイン」というものを企業の文化として取り入れていくことで、お客さま、そして社員自身の幸せにもつながることを信じています。

ーー湯浅:デザインには、お客さまだけでなく社員も幸せにする力がある。長年デザインに携わってきましたが、私も改めて新たな気づきをいただいた気がします。本日はありがとうございました。

 

インタビューを終えて
この日、甲府駅からはくばく本社へ向かうタクシーのなかで、「はくばくさんってどんな会社かご存じですか?」と何気なく声を掛けたところ、「地域に対してさまざまな取り組みをしてくれている、地元を代表する企業だよ」と運転手さん。早朝から私まで幸せになるような答えが返ってきました。
「デザインは社員も幸せにする」という言葉に、「デザイン」を実践していくことの重要性を改めて実感したインタビューでした。(湯浅)

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